俺の連休が終わりますね。
そんなわけで、初めてデリヘルを呼んだ時のことを書きます。
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ソープに通いだすようになってから、俺の中で変わったことがある。
それは、
「オナニーで射精するの、もったいないな」
という感情である。
ソープに行くまでは、お気に入りのエロ同人(回転ソムリエ)でシコシコ射精することに何の不自由も感じていなかった。
でも、ソープで他人の手によって射精させてもらうことに、何か「射精の快楽以上に得られるもの」を見いだしてしまった。
気づいた時にはもう全部終わっていた。
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小倉にはソープ街がある。
そんなに大きくはないのだが、明らかに他の場所とは一線を画すような、ドロドロとした怪しい空気が流れている場所がある。
そこで俺は、60分17000円程度で射精させられていた。
ちょうどボーナスが入った時期だったので、お金はいくらでもあるというような錯覚に陥っていた。
でもそんな状態も束の間、すぐに口座の残高はボーナスをもらう前の状態に戻ってしまった。
(バカなことをしてしまった)
思っても、もう何もかもが遅いのである。
とはいえ、他人の手で射精させられる快楽を忘れられない俺は、耳に挟んだことのある『デリヘル』という存在に目を向けてみることにした。
『デリヘル』とは。
電話一本で女の子がチンポを握りにやってくる、クソ高いピザハットみたいなものです。
基本的に女の子はチンポを上下にしごくか、口に含むかといった感じのサービスで、セックスはしません。
セックスをするよりも、手で握られるとか舌で舐められている方が気持ちいい時もあるので、俺にとってはデメリットが見えなかった。
その日もソープ街をうろついていた俺だったが、仕事終わりというのもあって、0時を回ってしまった。ソープは、大体が0時を過ぎると店を閉めてしまう。
行き場をなくしたチンポが泣いている……
お前に悲しい思いはさせないからな……
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「はい。デリ○○ですけど」
聞き取りづらい声が電話越しから聞こえてくる。
声も、若いのかそうじゃないのか分からなかった。
深夜1時。
俺は自宅からデリヘルに電話をしていた。
デリヘルを呼ぶ時は、ホテルに呼んだりする人も多いらしい。
基本的にデリヘルの料金設定はソープよりも安めなのだが、ホテル代を自分で払うと結局ソープと同じような値段になってしまう。
俺は、それを避けたかった。
それに俺は1人暮らしだ。怖いものなんて無い……
「あ、あの、おまかせコースでお願いします……ッヒ」
俺はソープを使う時は、フリーで入るようにしている。
だって、指名した女の子が人間じゃなかったら……?
フリーで入った方が『フリーだから……』と自分に言い訳できる。
俺はいつだって逃げ道を探しているんだ。
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『ピーンポーン』
チャイムが鳴る。
「!!!!!!!」
心臓が跳ね上がる。
布団に寝転んで蛍光灯を眺めながらチンポを甘イジリしていたら、もうデリヘル嬢の到着の時間になっていたらしい。
上がる心拍数を何とかコントロールしながら玄関へ向かう。
「はい……」
ゆっくりとドアを開ける。
まだ姿は見えない。
「ど、どうも初めまして」
ドアの影から女の子が出てきた。
身長150cmも行かないような、小柄な子だった。
髪の毛は茶色で、この仕事でよく見る感じで、若干痛んでいた。
歳は若く見える。
「は、入っていいですか?」
「あっ、どうぞ」
女の子は、なんだか緊張しているみたいだった。
靴を脱ぐ動作もぎこちない。
聞くと、どうやら今日初めて出勤したらしい。
でも俺が何人目かまでは教えてくれなかった。
聞く俺もかなり気持ち悪い。
「じゃあ……交通費含めて60分、13000円です……」
「あ、はい」
居間に座る女の子に、財布からお金を抜き出して渡す。
ソープだとお金を渡すのは受付の男の人なので、こうやって女の子に直接お金を渡すと「本当にこの女の子は、お金を払うとちんちんをシコシコしてくれるんだよなぁ……」と、えらく『現実』を感じてしまう。
少し悲しくなった。
「あの、お風呂入りますか……?」
女の子が聞いてくる。
「あっ、はい……」
今になってメチャクチャ緊張してきた。
お腹が痛くなってくる。
こういう時にお腹が痛くなると、『行為中にどうしてもデカい方をしたくなったら、やっぱりその時間もカウントされちゃうのかな……? そうだったら絶対デカい方なんて出せないよな……』とか考えてしまう。そして余計に痛くなってくる。大体は大丈夫なんだけど。
「先に入ってください」というので、俺だけ服を脱いで狭い風呂に入る。
寒い。
冬である。
風呂場で凍えていると、女の子が「お邪魔します」と言いながら入ってきた。
裸で入ってきた女の子は、かなりおっぱいが大きかった。
聞くとEカップらしい。
といっても俺は身体を洗われただけで、全く揉めなかったのだが……
風呂から出、布団の上で全裸状態のまま胡座をかいていると、女の子が「お待たせしました」と言いつつ部屋に入ってくる。バスタオルを身体に巻いていた。
「寝転がって、楽にしてください」
と言うので、布団の上に肌色のマグロが産まれてしまった。
女の子は自分が持ってきたバッグから、ローションが入ったボトルを取り出し、俺の身体の上に掲げる。
「ちょっと冷たいかもしれません」
トローッ
「ンヒィッ」
気持ち悪い声が出た。
女の子は無視してそのままチンポを握り始める。
「オッ…オッ…」
気持ち良い。
毎回思うが、やっぱり女の子にチンポを握られるのは嬉しい。
感謝が溢れてくる。
「どうですか?」
「いい~」
頭が悪そうな返事になる。
気持ち良いけど、やっぱり『人にチンポを握られ慣れてないので恥ずかしい』という気持ちもあって、ちゃんとした返事が出来なくなるんだよな。
哀れだね。
「………」
シコシコシコシコシコシコシコシコ
「………」
そのうち、どちらも無言になってきた。
女の子は、俺のチンポを無限に凝視しながら扱き続けている。
「………」
俺も、会話の種が見つからずに本物のマグロになっている。
「あの……」
女の子が口を開く。
「口でも、した方が良いですか……?」
首を傾げながら聞いてくる。
「あ、はい」頷く。
女の子は、俺のチンポにゆっくり口を近づけていき、
「チュッ」
キスをした。
「ほっ」
気持ち悪い声が出た。
そのまま女の子は俺のチンポを口の中に収めていく。
やがて全部飲み込まれてしまった。
「お~~~~……」
感嘆の声が出た。
「んふ」
チンポを口いっぱいに咥えた女の子は、笑っているように見えた。
やがて激しいストロークが始まった。
口の中は柔らかくて、かなり気持ち良い気がする。
(このままなら、すぐ射精できそうだな……)
俺は目を瞑って、うんうんと頷いた。
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30分後
「………」
俺は一向に射精できずにいた。
確かに最初は気持ち良かったものの、どうしても射精まで到達するような刺激ではない。
精神統一をしながら下腹部に力を入れて、何とか自分自身を射精に導こうとするものの、ぜんぜん射精感が上がってこない。
そうやっていると、俺自身かなり疲労してきた。
「………」
女の子も、必死な感じで無言フェラチオをしている。
口を使ってるから喋れないんだけど。
「あの……」俺。
「ぷぁ……なんですか…?」
「あの、もう、大丈夫です……」
俺はどうにも居たたまれなくなって、女の子を止めた。
「えっ、まだ時間ありますよ?」
怪訝そうに見つめる女の子。
「いや……ホント、大丈夫です、すいません」
謝る俺。
「いいんですか……?」
「……はい」
こうして行為は終わった。
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「………」
「………」
2人して無言になる。
改めて風呂に入りなおし、服を着て部屋に座っている。
かなりの罪悪感はあったが、正直なところ、アレ以上やっても射精できる自信がなかった。
俺は………。
「あの」
「は、はいっ」
女の子が声をかけてきた。
声が上ずってしまう。
「そこにあるの、読んでいいですか?」
女の子は俺の後ろにある本棚を指さす。
そこにあったのは、
買ってきたばかりで、まだ読んでもいなかった。
「あ、い、いいですよ」
断る理由もないので俺は答える。
女の子は本棚からそれを取り出すと、
「これ、気になってたんですよね~」
と呟く。どうやら、こういったものに抵抗が無いらしい。
話してみると、アニメや漫画も好きらしかった。
アニメに話が及ぶと、今期見ているアニメについて目を輝かせながら語られた。
俺は、アニメはあまり見ないので「あ~~~~~~~聞いたことはあるよ……」といった具合で、返事が曖昧になった。
「そうか~~~……お兄さんも結構、漫画とか好きなんですね」
「まあ……」
とにかく曖昧だった。
俺は『好きな漫画が好き』なのであって、『漫画が好き』ではないからである。
好きじゃない漫画は別に好きじゃない……
とはいえ、九州に来て初めてこんな感じの会話が出来て舞い上がっていた俺は、
「あ、あの、良かったらLINEとか聞いていいかな…?」
と聞いてしまった。
瞬間、
(あっ……ヤバイ、かなり気持ち悪いことをしてしまった)
と冷や汗が出てきたが、女の子は平然とした顔で、
「いいですよ」
と返してきた。
正直メチャクチャドキドキしていたし、初めてソープに行った時の非じゃないくらいに汗が出ていた。
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「あの、出してあげられなくて、すいません……」
玄関で、靴をはき終えた女の子が頭を下げる。
「いや、こちらこそ、すいません……」
俺はというと、射精できなかったことが、いまだに尾を引いていた。
申し訳ない気持ちになる。
「じゃ……」
女の子がドアに手を伸ばす。
「あっ!」
思いついた。
「え?」
「ちょっと待ってて」
俺は部屋に引き返す。
あるものを手に持って、玄関へ踵を返す。
「これ、あげるよ」
だった。
「え、いいんですか?」
女の子は目を見開いている。
「いや、どうせ読まないと思うし、興味がある人に渡した方がいいかな、って……」
俺は答えた。
この時の気持ちはよく分からない。
「あ、ありがとうございます、後で読みます……」
女の子はそれを受けとりカバンに入れ、無言で頭を下げ、出て行った。
「………」
俺が残った。
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その後。
女の子とLINE IDを交換したはいいものの、何も送るメッセージが思い浮かばず、そのまま放置していた。
そんなこんなしていたら、知らない間に女の子のLINEのアカウントは消え、デリヘルのHPにあった女の子のプロフィールも消えていた。
もう会うこともない。
おわり