2017-05-13 煙突 無 「あの煙突から、夜にたくさんの煙が出るんだ。夜はいつもそうだ」 タクシーの運転手が言う。 確かに夜の空よりも黒い靄が、並び立つ煙突から大量に流れ出ている気がする。 「俺たちに見えないからなんだ。隠れてコソコソとやってる。そうやって空気が汚れていくんだな」 運転手が笑う。 日に日に、化学物質が空気を汚染する。 そうなんだ。 この息苦しいのは、俺が息苦しいのは、煙突の煙のせいだ。 目的地に着いた俺はタクシーから降りる。 大きな咳がひとつ出た。