「毎日鏡の前で色々な表情を練習してみなよ、それだけで違うんだ」って、病院の先生に言われた。
それから毎日は、朝起きたら洗面所の鏡で楽しそうな表情、悲しそうな表情、怒ったような表情、色々やってみた。
鏡で自分の顔を見る習慣なんて今までなかったから、最初はかなり苦痛だった。だって死体みたいな気持ち悪い顔がグニグニと動くんですよ? 怖……。
でもだんだんと慣れてきて、色々な表情が出来るようになってきた。そうしていると、日常生活での表情もなんとなく明るくなってきたような気がした。
そんなこんなして、毎日トレーニングを続けていたある日、どこかのインターネットで『鏡の自分に向かって「お前は誰だ?」と言い続けていると、気が狂ってしまう』という話を見つけた。
鏡の前で、いつもの表情トレーニングをした後、その話が気になったから、戯れで「お前は誰だ?」って言ってみた。
そしたら急に、すごく気持ち悪くなってきた。
え?
それから鏡を見るのが怖くなってしまったので、表情のトレーニングを全然しなくなった。鏡というより、自分の顔を見るのが怖くなってしまった、って言った方がいいのかもしれない。
そんなことを思い出した。
あれ以上続けてたら、どうなってたんでしょうね。