エンディングまで、泣くんじゃない。

父親がトイレで本を読む種類の人間だったので、トイレに本棚があった。

 

トイレ本棚には、父親が買ってきた月刊誌の「ユリイカ」とか、いがらしみきおの「ネ暗トピア」とか、ジャンルを問わずに色々な本が置かれている。

 

ここはINPUTとOUTPUTを同時に実行できる空間、ってわけ。

 

 

(笑い)

 

 

父親がトイレに入ったら当然の如く1時間くらい出てこないので、今まさにウンチが漏れそうな俺は何もかもを諦めるしかない。

 

そんな感じのトイレの中で出したり入れたりするので、当然俺も置かれている本を読むようになる。

 

さて、そうして読んだものの中に、糸井重里の「85点の言葉─知的で口べたなあなたに」という本があった。

 

 

愛しさと、切なさと、糸井重里

 

 

この本は糸井重里が『週刊文春』誌上で行っていた読者投稿型の連載「萬流コピー塾」の抜粋本だ。

糸井重里扮する「家元」により毎回出題されるテーマに沿って、読者がキャッチコピーを考えるというもので、雰囲気としてはTwitterで日夜行われているくだらない大喜利に近い。

この本自体の出版は1989年。俺より1歳年上ということになる。

 

この本が印象に残っているのは、読者投稿云々というよりも、この本のために書き下ろされた論考である「特別講座」の部分が大きい。

 

手元には無いので、思い出すために本の見出しをインターネットで調べていたら、その名前を見つけた。

 

『言葉のうつり香』

 

内容としては「言葉には、その言葉自体に匂いがある」というもの。

 

例えば『新鮮』という言葉には、「魚」という文字が入っているため、キャッチコピーに『新鮮なフルーツ』という言葉を使ったら、瑞々しさや華やかな香りを表現したいであろう「フルーツ」に、魚の『生臭さ』が移ってしまうのだ、という。

 

へえ~って感じ。

 

へぇ~って。

 

だとしたら、エロ漫画で「新鮮な精○(ザ○メン)♥」みたいなセリフがあったら○液(ザーメ○)に魚みたいな臭いの印象がついて嫌………ではないな。

 

かなりのシナジーを感じてしまうな。

 

むしろ良い表現かもな。

 

 

 

(笑い)

 

 

 

時計は午前3時33分を指している。

 

 

 

ああ。

 

 

 

もうダメかも。

 

 

 

 

 

<終>