手コキ屋さん

国立市ディスクユニオンが閉店し、俺は21歳になっていた。

国立駅南口を出ると、まず目に入るのがクソほど長い『大学通り』である。

 

その煌びやかな並木道に目を向けず、右の方に歩くとすぐにディスクユニオンがある。

俺の趣味はゲーム音楽のサントラ収集。

週に7日ほど通い、オタクCDが中古で置かれるたびに回収する作業を行っていた。

他の客がロックやポップスのCD棚に目を向けている中、大学帰りの身体が臭いオタクフェイスがもぞもぞと小さいアニメ・ゲームCDコーナーで蠢いている。

無様だったと思う。

 

そんなディスクユニオンも、国立駅から姿を消す。

隣の駅、立川に移転したと張り紙が貼られていた。

大学の帰りに寄れないのなら中古でCDを買う意味がない。電車賃がかかるので。

 

そうして俺の中古ゲーム音楽CD収集はほぼ幕を閉じたのである。

 

嘘です。

 

今でも買ってます。

 

 

―――――――

 

 

時は過ぎ……

 

 

2015年12月28日、俺は立川のディスクユニオンにいた。

大学時代の記憶に想いを馳せながら、今日の目的を思い出す。

 

 

『東京の友達と飯を食う』

 

 

このためだけに、現在住んでいる北九州からLCCで30000円弱の旅費を支払い、立川に来たようなものなのである。

時計を見ると午後7時手前。

 

俺は待ち合わせをしている立川駅みどりの窓口前へ急いだ。

 

 

―――――――

 

 

「……で、○○と甲府のソープに行ったんだけど、もうその時の事は思い出したくないね」

「はは」

「地元なんだから北尾さんも来れば良かったじゃん」

「いや、休みが……」

 

 

立川駅北口の近く、『じとっこ』という居酒屋。

そこで俺は友人とサシで話していた。

適度に酒も入ってきて、シモの話が多くなってくる。

 

秋葉原の体○倉庫(いちゃキャバ)に○○と行った時は面白かったな。○○の奴さ、俺が連れてくまでは『いや~あんまりそういうところは……』とか行ってた割に、○育倉庫に行った後は『どこでもイイから””抜かせて””くれ!!』つって泣きついて来てさ。ソープ行った挙げ句、結局””不発””だったっていうね(笑)」

 

大学時代からこんな話ばかりしていたわけではない。

社会人になって、みんな変わってしまったんだ。

 

 

「ところで」友人。「この後はなんか予定あるんすか」

腕時計を見ると、もう夜10時になっている。

 

「いや、もうホテルのチェックインも済ませたし、立川にとってあるから後はフリーだよ」

 

俺がそう言うと友人は「う~~~~ん」とか言って悩み始める。

 

 

「どうしたんすか」

「………最初に『おっぱい』に行ってから『抜く』か……初っ端から『抜く』か……」

「!?」

 

 

「いや、終電なら12時まであるから、初っ端から『抜いた』ら時間を持て余すな……ここは『おっぱい』でムラついてから『手』で『フィニッシュ』ってとこが妥当か……」

「……」

「…スッ…スッ…(スマホを操作しだす)」

「『どの娘』がいい?」

 

スマホの画面には、商品として陳列されている女の子達がいた。

 

「……」

「早くしてくれよ、予約すンだからさ」

「……さりなちゃん」

「よっしゃ」

 

 

 

つづく